海賊の話

海賊?と聞けば誰でも、映画の中に出てくるドクロマークの旗をなびかせ、帆船を襲う海賊を思い出すだろう。

しかし、海賊は映画の中だけではない。現代にもりっぱに存在するのだ。

昨年の10月に発生した「アランドラレインボー号行方不明事件」が記憶に新しい。海賊に襲われた同船は、船を乗っ取られ、積荷のアルミナを奪われた。船長と機関長が日本人だったため、マスコミも取り上げた。幸い乗組員全員殺されずに、ゴムボートで漂流中を助けられた。不幸中の幸いである。中には、船や乗組員が行方不明になっている船もある。

海賊は主に、マラッカ海峡近辺の船の行き来が集中する海域で多く発生している。乗組員が操船に夢中になっている間に、船尾より高速艇で忍び寄り、忍者のごとくロープ一本で忍び込み、金品を奪って素早く逃走するというのが、彼らのパターンだ。

私たちが日々読んでいる、「共同ファックスニュース」には、毎日のように海賊に襲撃された船の記事が載っている。その位置を海図に転記するのだが、あちこちに海賊マークがつけられ、海図が黒くなっているほどだ。

日本の新聞は、日本人が事件に遭遇しなければ(そして死者が出たりしなければ)、記事として取り上げない。しかし、日本人の乗り組んだ船でもかなりの数の船がインドネシア周辺海域で海賊に襲われているのだ。過去我が社の船でも何隻か襲われ、金品を奪われている。

最近特に、海賊が多発しているのは、インドネシア経済の下落と密接に結びついていると私は思う。経済が下降線をたどれば、必然的に失業者が増える。増えた失業者は、何もすることがないので、リスクは大きいが、海賊家業開業となるわけだ。

また、あくまで私の憶測だが、船を丸ごと乗っ取って、積み荷を売りさばくなぞ、通常では考えられない仕業だ。裏には大きな組織が動いているのが嗅ぎ取れる。

外国船では、船内に武器をある程度持ち、海賊に対抗している船もあると聞く。日本船には、銃器は一切ない。それで日本船は襲われるのだという人もいる。

私たちの船では、とにかく海賊に乗り込まれないようにする対策を講じているだけだ。

具体的には、船尾をライトで照らし、海賊に「見張り有り」を喚起する。またよじ登りにくいよう消火ホースで放水するというものだ。

しかし、根本的な解決にはなっていない。

 

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